めまい

ちくのう 花粉症 急性中耳炎 滲出性中耳炎 めまい  

★耳が原因のめまい

 耳の働きは一つは聞こえであり、もう一つは平衡をつかさどることです。

耳は解剖学的に外耳、中耳、内耳に分けられます。

 内耳のうち

聞こえ − 蝸牛(かぎゅう)が受け持ちかたつむりのかたちをしています。

平衡  − 前庭(ぜんてい)と三半規管(さんはんきかん)

半規管が3つあるため(外側半規管、前半規管、後半規管)三半規管といいます。外側半規管は水平半規管ともいいます。 

耳が原因のめまいの場合、患者さんは天井などの外界がぐるぐるまわっていると訴えます。この時実際は天井がまわっているわけではありません。患者の眼球がまわっているためそう見えるのです。この眼球の動きを眼振(がんしん)といいます。

眼振をよく観察するためにはフレンツェルの眼鏡を使います。このめがねは強い老眼鏡(凸レンズ、とつレンズ)です。一度かければわかりますが、15〜20D(ジオプトリー)と度が強いため、まわりのものがぼやけてよく見えません。この結果、患者さんは視線を固定することができなくなります(非注視状態)。非注視時は弱いかすかな眼振も観察しやすくなります。

耳が原因の眼振は水平性、あるいは水平回旋混合性の眼振です。この時眼球はゆっくりと右あるいは左に動いたあと、急速に反対に動き元の位置に戻ります。この動きを繰り返しています。1秒間に1回程度。この眼振を確認すれば耳鼻科のお医者さんは「ああ、耳のめまいだな」と一安心です。

一方垂直性の眼振が出ている場合などは中枢性(脳、特に小脳、脳幹)のめまいの特徴で、すぐにCTなどの検査が必要となります。このように眼振の詳しい観察はめまいの原因を知る上で非常に重要なものです

耳が原因のめまいには大きくわけて3つの疾患があります。

具体的に患者さんがどの様な症状を示すのか例を挙げたいと思います。

○ A夫さんの場合

A夫さんは68歳の男性です。仕事で空港で飛行機を待っていたとき、突然ぐるぐる回るめまいの発作に襲われ、立っていられなくなりました。吐き気が強く、何度もあげてしまいました。最後にはからあげばかりで何もでませんでした。すぐに救急車で近くの病院に送られました。聞こえが悪いとか、耳鳴りとかは全然ありませんでした。

●1、前庭神経炎

夜などに救急で運ばれる患者のほとんどがこの病気です。前庭自律神経反射のために吐き気を伴うことが多く、実際多くの患者さんがゲロゲロ吐いています。これはおなかに病気があるわけではありません。乗り物酔いで吐き気を起こすのと同じ理由です。

万が一の脳出血などの中枢性の疾患を否定するため、激しい頭痛がないこと、意識がはっきりしていること、手足がちゃんと動くことなど他の神経症状がないことを確認しなければなりません。


○ B子さんの場合

B子さんは28歳の女性です。1年前(95.7)に30分くらいのぐるぐる回るめまいが起こりましたが自然に治りました。それ以後よくめまいがおきるようになりましたが、いつも5分くらいの短い時間で治りました。しかし、今回は(96.3)ぐるぐる回るめまいと一緒に右耳の低い耳鳴りを感じ、吐き気が強く今までで一番ひどかったです。その後耳鳴りはときどき消えたりしますが、鳴っている時のほうが多い状態です。聴力検査では、右耳の低音が障害の強い感音難聴が認められました。

●2、メニエール病

 メニエール病の名前は一般の人にもよく知られています。そのため今でも耳からのめまいは何でもメニエール病だと誤解されている面がありますが、必ずしそうではありません。

 めまいと一緒に難聴、耳鳴りがあること、発作を繰り返すことが特徴です。前庭神経炎は2、3日ぐるぐるめまい(回転性めまい)が続きますが、メニエール病の回転性めまいは数時間程度しか続かず比較的早くなおります。このめまいの原因は内耳の中の内リンパ水腫とされています。利尿作用のある飲み薬などが一般に処方されます。性格的には几帳面な人、仕事などに熱中すると何時間も休まずに続けてしまうような人に多く発症します。

 

○ C江さんの場合

   ある朝、寝返りを打ったとき急にぐるぐると回るめまいがおきびっくりしてしまいました。めまいは10秒程度で収まりましたが、翌日もまた同じめまいを起こしました。近所の脳外科も受診し、MRI、CTなどもとってもらいましたが、特に異常はないとのことでした。薬も処方されましたがなかなかよくなりません。血圧もとくに高くはありません。

●3、良性発作性頭位めまい

 寝返りをうったとき、高いところのものを取ろうとして上を向いたとき、発作性にめまいを起こします。めまいの持続時間はせいぜい10秒から20秒で非常に短時間です。頭の位置を元にもどすとめまいは止まります。比較的治りやすいのですが、再発することもよくあります。このめまいについては最近、三半規管のうちの後半規管のリンパ液中の浮遊物質が原因であることが明らかになっております。これに対する治療法として、この浮遊物質を半規管から追い出す運動療法(エプリー法など)が非常に効果的であることがわかってきました。既に多くの患者さんでこの治療法をおこなってきましたが、よい治療効果をあげております。

 

 耳が原因のめまいは決して命に関わるものではありません。その点は安心していいのですが、しかし時に症状が激烈であったり、なかなか治らなかったりで、日常生活に大変支障になります。すでに述べた様な症状のめまいをお持ちの方は一度耳鼻科を受診してよくみてもらうことをおすすめします。

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