石狩湾耳鼻科
伝染性単核球症

Q:娘がのどが痛くなり病院を受診したところ伝染性単核球症と言われました。どういう病気なのでしょうか。

A:耳鼻科ではのどの痛みを訴える患者さんがたくさん受診します。細菌、ウイルスなどによる急性扁桃炎、急性咽頭炎が多いのですが、その中でもEBウイルスと呼ばれるものによる急性扁桃炎を特別に伝染性単核球症と呼んでいます。
 伝染性単核球症は10歳代、20歳代の青年期によく起こります。高い熱と強いのどの痛みを訴えるのは通常の急性扁桃炎と同じですけれども、扁桃の表面全体が白っぽい膜のようなもので覆われ、くびのリンパ節がごろごろと腫れます。肝障害を起こし、体のだるさが強いのも特徴です。しばしば皮膚の発疹も認められます。血液検査では、白血球が増加しますが、リンパ球を主体とする単核球という種類のものが増えるため、病名に”単核球症”という名前が使われています。このウイルスの抗体の値を測定することにより診断が確定しますが、少し時間がかかります。抗体価の結果が得られる前でも、通常は先にあげた症状、血液検査、肝障害の有無などからある程度この病気を予測できます。
 原因がウイルスであるため、抗生物質は効きません。二次感染を防ぐための理由などで実際の治療では抗生物質も投与されることが多いのですが、対症療法が主体になります。ごくまれに重症型、慢性遷延型のかたちをとるものがあるとされますが、一般的には自然に治る病気であり、過度に不安になる必要はありません。悪化した肝臓の障害も時間とともに正常にもどります。

Q:伝染性というからには、インフルエンザのように人にうつるのでしょうか。

 A:伝染性単核球症はEBウイルスにまだかかったことのない青年期の患者さんが、初めてこのウイルスにかかったときになる病気です。つばなどを介して感染しますから、確かにうつる病気ではあるのですが、以前に感染している人にはこの病気は起きません。日本人の場合は、ほとんどが幼小児の時に無症状ないしは軽い症状でこのウイルスにすでに感染しています。そのため本邦の成人では9割の人がこの抗体をもっています。ですから伝染性という言葉にあまり神経質になる必要はありません。この病気は日本では欧米より少ないとされています。幼小児期にすでに感染している割合が欧米より高いからです。日本の母親は子どもに食事を与えるとき一度自分の口に入れた物を同じ箸を使い子どもに与えることが多いことがその理由でないかと推察されています。

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